教わったこと、気づいたこと

「初心 忘るべからず」

これは、世阿弥の初めての著作『風姿花伝』の中の有名な言葉である.

初心とは、「段階ごとに経験する未熟さ」のことであり、

未熟な時代の失敗やその時の屈辱感を忘れないように常に自らを戒めれば、

上手くなりたいと思う向上心をもち続けることができるというのである。

おごりや慣れは、芸の魅力を奪い、花を失くす。初心を忘れたら初心に戻る。

能楽師の安田登先生によると、「初心忘るべからず」は「初」に意義があるとのことである。

初とは衣(ころも)に刀(刀は鋏のこと)と書く。

即ち着物の仕立て直しのこと「衣にはさみを入れて仕立て直しをする」。着物を一度作ると代々着るもの。

子どもや色んな人に受け渡して着てもらう。そして受け渡す時に体型が違うので仕立て直しをする。

古い着物を一端、鋏を入れバラして仕立て直す。仕立て直して着物を受け継いでいくのである。

ということは、どんな立派な着物でも今どんなに綺麗に着ていても、着る人が変わったら仕立て直す、

鋏を入れるんです。これを初心というそうである。
だから、どんな着物でも変わらないといけない時はしっかり鋏を入れ仕立て直さねばならない。

お能の場合は80才を過ぎて円熟味を増すと言われ80才で引退すれば若いと言われる。
しかし、年老いて体が動かない、声も出ない状態でどうするんだ、

と聞くと将に初心 忘るべからずで、体が動かない声も出ない状態でお能をやるそうだ。

その状態から、またお能というものを自分で考えてやるとのことである。
お能の演者のようにあるがままを受け入れて、ないものを欲しがらず精一杯その時の自分を表現する。
次のステージに行く為には「かっての自分を切り捨てるべし」という、挑戦する心構えが必要だという事。

それまでの自分を切って捨てていく覚悟をもて、という教え なのである。

どんなに年をとっても、常に自分自身を仕立て直しして生きることの大切さ、

昨日まで積み上げた成功に安住しない生き方の大切さを教えてくれている言葉なんだそうです。

「初心 忘るべからず」

人生は毎日が仕立て直し。昨日まで着ていたすばらしい衣に今日はさみを入れる勇気を持て、ということ